クロの読書録

読書と散歩、ときどき資産運用

【感想】「流浪の月」さすがの本屋大賞受賞作でした

 

2020年の本屋大賞「流浪の月」を読みました。

心に響く読書となったので、感想を書いてみます。

 

図書館で予約してから数ヶ月。

すっかり忘れた頃にやってきました。

話題作はなかなか予約順位が回ってこないので、時間が経ってから読むことが多いです。

私が住む横浜の市営図書館は6冊まで予約ができるので、1冊くらい気長に待とうと思って、予約していたのでした。

 

すごく良い本だったので、是非おすすめです。 

そこまで長くなくて、それでもしっかりとした読後感が欲しいときに、おすすめです。

世間の闇も垣間見えますが、最後は胸がすくような爽やかな気持ちになりました。

 

それでは感想をつらつらと。

ここからはネタバレ注意です。 

 

 

 

「流浪の月」2章までのあらすじ

 

両親と離れ離れになり、親戚の家に引き取られた更紗。

親戚の家で嫌なことがあり、公園でぐったりしていると、

それを見た男の人が「うちにくる?」と声をかけてくる。

消耗していた更紗は、ついて行ってしまいます。

 

声を掛けてきた男は、19歳の大学生、佐伯文。

文は更紗を閉じ込めるわけではなく、いつでも自由に出ていっていいと言う。

そこから、文と更紗の不思議な同居生活が始まります。

とても規則正しい文の生活に、少しだらしく自由な更紗の生活が重なって、お互いに影響を与えていく。

一方で、テレビを見ると更紗が誘拐されたと大事件になっています。

それを知りながらも二人は穏やかな生活を続けていきます。

親戚の家から開放された更紗は幸せを感じている。

ある日、二人は動物園に行きたいと思い立ち、二人で出かけます。

 

連日報道されている更紗の顔がバレてしまい、一緒にいた文は逮捕されてしまいます。

更紗がどう感じていたかは関係なく、文は世間的には小学生を誘拐した犯人。

更紗が文をかばうほど、洗脳を疑われて逆効果に。

二人は離れ離れになってしまいます。

 

そして、月日は流れ、更紗は20代に。

更紗ちゃん誘拐事件の被害者として、世間の目に晒されながら目立たないように生きる更紗の姿が描かれます。

文との思い出が忘れられずに、仕事や恋人との関係に悩みつつ生活している更紗。

そして、更紗は同じ街で生活する文を偶然見つけてしまいます。

ふたたび、更紗と文の物語が重なっていきます。

 

「流浪の月」息苦しさと爽やかさと

 

世間から見ると少し変わった家庭で育った更紗。

両親はとても仲が良く、子供がいても恋人のよう。

母親は通学カバンもランドセルではなく、更紗が気に入ったカータブルを与えます。

大人向け映画の『トゥルー・ロマンス』も家族3人で仲良く見ます。

家でカクテルを作り、更紗にもノンアルコールカクテルを作ってあげる。

少し変わってはいますが、幸せな家庭です。

 

しかし、病気で父親は他界してしまい、ショックを受けた母親は恋人を作って、家を出てしまいます。

更紗は親戚の家に引き取られますが、両親との生活とは違う生活に、肩身の狭い思いをしながら生きていく。

父親が行きてさえいれば、幸せに行きていけたはずなのに、父親の死をきっかけに人生が大きく変わってしまいます。

 

他人の変わった生き方を許容しない、日本的な生きづらさがありありと見えてきます。

父親さえ生きていれば、更紗はより自由で闊達な素敵な女性になっていただろうに。

 

全体的な物語の印象は、息苦しい閉鎖的な世の中が描かれていますが、

物語の最後では、文と行きていくことを決めた更紗が、その生来の明るさ、自由奔放さを取り戻します。

全体的に明るい物語ではないですが、ラストまで読むと、文と更紗が行き着いた関係性に、胸がすくような爽やかな心地になりました。

 

「流浪の月」事実と真実

 

更紗にとっての真実は、

・文は生きづらい親戚の家から連れ出してくれた人

・何を強制するでもなく、一緒にいてくれる人

・同棲している彼氏から助けてくれた人

 

世間的な事実は、

・小学生を誘拐した変質者の大学生

・文が更紗を閉じ込め、洗脳している

・15年経った後も、更紗は文に洗脳され続けていて、離れることができない

 

「世間」というよくわからないものだが、人の生き方に多大な影響があるもの。

インターネットが広まった、検索すれば情報が得られる世の中。

間違った事実が公然のものになってしまった場合、過去を消すことはできない。

一生、付いて回る烙印に背筋が凍る思いがしました。

 

私も日々、芸能人の不倫やら、どうでもよい情報に踊らされている感があります。

自分にとって大事な情報を取捨選択すること、インターネットの情報に振り回されすぎないよう、改めて考えされられました。

 

さいごに

 

さすがの本屋大賞受賞作でした。

 

本屋大賞はやっぱり間違いないですね。

 

そこそこのボリュームでしたが、物語に引き込まれるので、一日で読了してしまいました。

 

全体期に暗い内容ですが、最後は生き方を定めた更紗の姿に心が洗われる思いがします。

 

私も、世間的な事実に惑わされず、自分の中の真実を大事に行きていきたいものです。

 

よい読書体験となりました。