【感想】書籍「うつ病九段」 〜将棋のプロ棋士のリアルなうつ病体験記〜
こんにちはー。
暑い日が続きますね。
私は暑いとき、よく図書館に涼みに行きます。
図書館を一周して、借りる本を選んでいると、気づくいたら30分から1時間くらいは時間が経っているので、自然と汗が引いています。
今回読んだ「うつ病九段」も、図書館でウロウロしていたら、出会いました。
この本は、将棋のプロ棋士である先崎学九段が、自身のうつ病体験について記した本。
著者自身のリアルな体験なので、
うつ病になった時に周りから言われて嬉しかったこと、
やられて嫌だったことが書かれているのが勉強になりました。
「うつ病について理解したい方」
「身内や周りにうつ病の方がいて、どう接したらよいか知りたい方」
には、とても参考になる本だと思います。
無理やり「暑すぎる」に絡めてみましたが、本を紹介する記事になります。
それでは、感想をつらつらと。
先崎学九段のプロフィール
1987年、17歳のときにプロ入りして、
現在の段位は最高段位である9段です。
タイトル獲得はないですが、
一般棋戦優勝2回、順位戦ではA級在籍2期のトップ棋士のひとり。
2020年現在の順位戦ではC級1組に在籍しています。
先崎さんはいわゆる「羽生世代」と呼ばれる棋士のひとりです。
「うつ病九段」の作中でも、後輩や先輩には敬称をつけていますが、
羽生善治さんのことは「羽生」と呼び捨て。
同世代で活躍する棋士に対しての、ライバル心や独特の距離感を感じます。
「うつ病9段」の感想
先崎さんがうつ病を発症したのは、平成29年6月23日。
このときは「藤井フィーバー」の前で、将棋界は「不正ソフト使用疑惑」で揺れに揺れていた頃。
監修していたマンガ「3月のライオン」の映画が封切りとなったのもあり、先崎さんは原稿・イベント・取材などで忙しすぎたみたいです。
寝て起きても疲れがとれず、頭が重い。
転げ落ちるように症状が悪化し、 精神科医の兄の勧めもあって、平成29年7月26日に慶応大学病院精神神経科に入院します。
そこからは、1ヶ月の入院生活とその後1年間の闘病生活が書かれています。
まったく感情の動かない重症期と、その後の好不調を繰り返しながら進む回復期について、とてもわかり易く描かれます。
私自身、うつ病になる人が凄く多いこと、決して他人事でないことは感じていましたが、
うつ病が実際どんな病気家は、いまいち理解できていませんでした。
本書では作者の経験を通して、うつ病がどんな病気なのか、周りはどのようなことを考えたらいいのかが、よくわかります。
精神科医の兄が語る、うつ病に対する考え方が、わかりやすく、とても参考になりました。
「うつ病は心ではなく脳の病気」
「とにかく歩くこと」
「自殺をせず、寝て、歩いていれば、人の回復力によってうつ病は必ず治る」
うつ病の回復速度や治り方は人それぞれ違うと思いますが、
実際に重度のうつ病を発症して、回復した人の手記はとても貴重だと思います。
また、この本が治療中の回復期後期(「と信じたい」と先崎さんは書かれています)に書いているのが、すごい。
自分の遠い過去のことではなく、まだその渦中にいる時点で書いていることに、より生々しいリアルを感じます。
本書の最後では、先崎さんが、将棋に邁進してきた今までの人生を振り返る場面があります。
まるで、「3月のライオン」の主人公のエピソードのようで、一つのことに邁進すること、勝負に掛ける棋士という生き方に壮絶さを感じました。
ちょっと私のこと 〜2ヶ月ほど休職しました〜
私はうつ病にはなりませんでしたが、昨年仕事で行き詰まってしまい、2ヶ月ほど休職した経験があります。
4月にとても忙しい職場に異動となり、慣れない中でプレッシャーのかかる仕事で、人に頼ることもできず、押しつぶされてしまいました。
もう、そのまま働くことに行き詰まりを感じて、病院の精神科に行き、診断書を書いてもらって休職することになりました。
休職中は、このまま復帰できなかったらどうしよう、とぐるぐると悪いことを反芻するように考えてしまいました。
それでも、とりあえず、体調を整えようと思って、日中はたくさん散歩をして体を疲れさせ、夜はよく眠るようにしました。
そうしたら、だんだん体調も戻り、精神的にも少し落ち着くようになりました。
うつ病九段を読んだ後に思い返してみると、休職中の過ごし方としては、正しかったのかなと思います。
もう1年くらい経ちましたが、その時の経験は今の私の考え方に大きな影響を与えています。
自分で逃げ出すことができたので、結果としてよかったな、と今では思っています。
さいごに
私は、マンガ「3月のライオン」やライトノベル「りゅうおうのおしごと!」のような、将棋を題材にした作品が大好きです。
私自身は将棋の実力はヘボいですが、将棋のニュースを見たり、将棋界の書き物を読むのは楽しい。
ひとつのことに人生を賭けた、棋士という生き方、心の強さに憧れを抱きます。
「りゅうおうのおしごと!」については、こちらの記事に感想を書いています。
面白いですよ。
今回読んだ「うつ病九段」も、ちょっと違った角度から棋士の生き方が見えてくる読み物として、楽しく読むことができました。
うつ病を理解したい方、うつ病の患者さんへの接し方を知りたい方にはもちろんオススメですが、将棋が好きな方にも勧めたい一冊です。
先崎さんは何冊も本を出しているようなので、これからも追いかけてみたいと思います。
おしまい